車の個人売買は危険といいますが、店頭販売では絶対に売っていない車を譲ってもらえるという醍醐味があります。
今回は、いすゞがかつて北米でのみ販売していた「アクシオム」という激レア車を譲ってもらった経緯をご紹介したいと思います。
売るかどうかは決めてない、値段を見てから決めたいというときに、買取店まで査定に行くのは面倒ですよね。
車の買い替え、週末に動き出すなら平日中にMOTAでネット査定に出しておくのが一番賢いやり方です。
筆者はMOTA車買取でディーラーよりも30万円以上高く売れました。
いすゞ「アクシオム」ってどんな車?
いすゞ「アクシオム(AXIOM)」は、いすゞ自動車が2001〜2005年まで北米で販売していた車です。
詳細は以下の通りです
スペック | 詳細 |
---|---|
全長 | 4,640mm |
全幅 | 1,795mm |
全高 | 1,705mm |
搭載エンジン | 6VE1(3,500cc) |
使用燃料 | ガソリン(レギュラー) |
駆動方式 | 4WD(TOD搭載) |
かつていすゞが販売していた「ビークロス」の後継モデルであり、1999年に開催された「第33回東京モーターショー」に参考出品車が出展されました。
いすゞはまだ国内のSUV製造から撤退しておらず、次期型ビッグホーンを含めて限られた予算の中で乗用車の開発を行っていました。
結局2002年に完全撤退してしまったよ、、
アクシオムは国内で販売する予定だったので、ボディサイズも全幅1,800mm以下に抑えられています。
ビークロスが3ドアで不評だったこともあり、アクシオムは5ドアに変更され、開発者は国内でのヒットを確信していたに違いありません。
開発する現場は日本国内で売る気でも、会社としての判断は厳しく、結局国内で販売されることはありませんでした。
その結果、アクシオムは北米のみで販売されることになりました。
北米での販売も厳しく…
日本国内では販売できなかったアクシオムですが、北米では大ヒットしたのかと言われればそうでもありません。
全長4,640mm×全幅1,795mm×全高1,705mmというサイズはアメリカでは小さく、ビッグホーンとの明確な差別化もできず中途半端な存在になってしまいました。
2001年から販売開始するも、2005年には販売終了となってしまいました。
筆者がアメリカ在住の人に聞いた話では、アクシオムはあまりにマイナー車種で、アメリカでもほとんど見かけることはないそうです。
まさに悲劇の車でしょう!
スパイキッズのおかげで知名度は高い
そんなアクシオムですが、映画「スパイキッズ」に劇中車として登場していたこともあり、知名度は高いのです。
映画の中でもアクシオムの登場回数は多く、その影響もあり「スパイキッズの車」と言われることも多いのです。
この車に乗っていると映画好きから声をかけられます
いすゞ・アクシオムのコンセプト
筆者の手持ち資料によると、アクシオムは「アーバン・パーソナルSUV」と記載されています。
SUVの進化に、いすゞが新しいアプローチを試みます。それは本格オフローダーの性能をベースに、洗練とスポーティさ、機能性を加えた、都市生活者のためのいわばアーパン・パーソナルSUVです。都市生活にフィットするサイズ、どのようなシーンでも存在感を主張する個性的なスタイリング、ハイウェイでのハンドリングに重きを置いた足まわりのセッティング…。しかしひとたび週末ともなれば、遊びのギアを満載してカップルで100マイル先のリゾートまで一気に駆け抜ける。そんな機能性と行動力も併せ持っているのです。Cool&Active 一その鮮烈な印象は室内に表現されています。完全に独立した4人分のシート、入念に仕立てられたレザートリムは一種SEXYな雰囲気さえも醸し出しています。タフでクールな洗練された都会人、を人に例えるとこんなところでしょうか。それは現代に生きる我々誰もが抱く理想像のひとつに違いありません。
※第33回東京モーターショーパンフレットより
都市にフィットしたSUVと謳っていることもあり、現代におけるハリアーに近いコンセプトなのかなと筆者は感じました。
いすゞはだいぶ昔からこういうコンセプトの車を多数出しており、「SUV=悪路!泥!川!山!」みたいなイメージから脱却したかったのかもしれません。
ビークロスも発売時はビッグホーンをベースとした本格SUVになっていましたが、コンセプトカーのときには都市型のスマートなSUVだったと記憶しています。
詳しくは、ビークロスのコンセプトカーについて解説している記事「1.時代を先取りしすぎたデザイン」をご覧ください。
ここまで、Wikipediaにはない情報を中心にアクシオムについてざっくりご紹介しました。
アクシオムを譲ってもらった経緯
北米でしか販売されなかったアクシオムが日本にある理由、そしてそんなレアな車を筆者が譲り受けた経緯をご紹介します。
アクシオムが日本にある理由
このような希少な車が日本国内にあるのは、関係者の方が当時アメリカから並行輸入をしたからです。
日本で販売されていない車を並行輸入するのは相当大変なことです。
ざっと思いつくだけで、これだけのデメリットがあります
- アメリカで車を手配しないといけない
- 日本に船便で送らなければならない
- 日本国内で通関手続きをしないといけない
- 排ガス・マフラー・騒音試験を受けないといけない
- 車検を取得しないといけない
- ここまでかかるお金にカーローンは使用できない
輸入する車をアメリカまで買い付けに行くのはもちろん、日本に送る手続きもしないといけません。
もちろん車両の購入費用にカーローンは利用できず、全額現金で支払う必要があります。
日本国内に車両が入ってきても、車検を通すために日本の法規制に適合させる作業が待っています。
日本国内でも販売されている車種であれば部品を流用するなどができますが、未発売車種となると日本仕様のパーツは一切ありません。
ワンオフでパーツを作るなどの苦労をした上で、ようやく車検を取ることができます。
ここまでの苦労をした上で、ようやく日本国内を走行できるようになります。
しかし万が一故障をしても、当然ディーラーでは修理をしてくれません。
それでもこのアクシオムを並行輸入したのですから、前オーナーは相当な思い入れがあったのです。
苦労して手に入れた並行輸入車を譲ってくれた理由
筆者は当時、アクシオムと同じエンジンを搭載しているいすゞのビッグホーンに乗っていました。
古い車でしたがそれなりに大事にしており、エンジンが焼き付いたときには80万円かけてエンジン載せ替えまで行いました。
参考【80万円】ビッグホーンのエンジン故障から載せ替えるまでの修理記録
そして前オーナーは新車でアクシオムを並行輸入してから、15年間大事にしており、車齢的にもそろそろ買い替えを検討していたそうです。
ワンオーナーで大事にしてきた車だし、半端な人には乗ってほしくないということで、当初は廃車にする予定だったそうです。
しかし、同じように大切にしてくれる人がいるならということで、筆者が譲り受けることとなりました。
「非常に手がかかる車だけど大丈夫?」と聞かれましたが、手がかかる車であることは先のビッグホーンの件で十分理解しています。
その点をお話させていただき、無事アクシオムは筆者の元にやってくることになったのです。
無事引き渡しを迎えて
前オーナーさんとは業者を挟まず、個人売買で取引をしました。
書類を預かって筆者だけ名義変更に行くのではなく、今回は運輸支局までご一緒していただくことになりました。
並行輸入車ということもあり、車台番号が職権打刻となっていましたが手続きは無事に完了。
前オーナーさんが「大切にしてくれとは言わない。けど、これからたくさん故障もするだろうし、しばらくは一緒になって悪あがきしてくれないか」とおっしゃっていました。
筆者はこの一言こそ、「オーナーさんが15年一緒に戦ってきた相棒を僕に託す」ということなんだろうなぁと思いました。
ビッグホーンで十分理解しているつもりですが、旧車の維持は「戦い」です。
劣化する外装をどれだけ綺麗な状態で保つかというのは当たり前で、それ以上に毎日が故障と修理のイタチごっこのようなものです。
どんなに定期的にメンテナンスしててもあっけなく壊れるし、車は常に筆者の期待を裏切ります。
「自分が手放したらこいつは廃車」という状態で、どこまで悪あがきして乗り続けられるかという戦いを毎日している状態といえます。
だからこそ、オーナーさんは「悪あがき」という表現を用いたのだろうし、筆者も「相棒を託される」と感じたのです。
筆者の元にやってきたアクシオム
筆者の元にやってきたアクシオムは、記事執筆時点で5年が経過しますがキャンプにレジャーに長旅に大活躍しています。
15年間で蓄積された汚れを徹底的に落としたり、内装を専門業者でクリーニングしてもらったり、カスタムよりも維持をメインにしています。
参考5,000円の電動ポリッシャーで本気の車磨きをしてみた!コンパウンドの使い方も紹介
参考【画像レポ】車内清掃をプロのクリーニング業者に依頼してみた!料金と効果を公開
大きな故障はしていませんが、もちろんマイナートラブルは発生します。
その際も国内の販売店は頼れないので、まずは信頼できる整備工場を探すことが求められます。
基本的に部品の手配は自分で行うことになり、アメリカのディーラーから部品を購入して輸入したこともあります。
説明書やマニュアルは付属していましたが、当然すべて英語なので翻訳しながらの作業となります。
パーツを調べるために、SNSで海外の同車種に乗る人を片っ端からフォローしたこともあります。
翻訳ソフトを使って質問するのは一苦労です
アメリカ人からは、「ここ(アメリカ)でもマイナーな車種を日本で乗り回しているなんて!」と驚かれました。
日本車なのに日本車ではない、特殊な車に乗っているからこその経験を何度もしています。
それでも、いつか動かなくなるときまでこの車と遊びたいと思います。
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